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SRTの8つの特徴と活用事例から学ぶ次世代の映像プロトコルに求められるもの

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オープンソース化され、IP伝送におけるグローバルスタンダードへ進化を遂げたSRTの特長を紹介します。

SRTとは

SRTとはSecure Reliable Transportの略称で、IPで映像・音声を転送するためのプロトコルの一つです。カナダに本社を置くHaivision社が当時の衛星を用いた高額な伝送コストを低減したいというニーズに応え、毎年秋にオランダで開催されている展示会IBCにおいて、2013年に最初のデモ展示を行ったのが始まりです。以降Haivision社の伝送製品に実装されてきました。
2017年にオープンソース化され、同時に組成されたSRT Allianceによる推進のもと、今日では多様なメーカによって開発・実装されることで日々進化を遂げている技術です。

SRTの8つの特徴

暗号化

SRTはAES128/256をサポートしており、通信の暗号化に加えて伝送対象自体の暗号化を行います。
HTTPS(HTTPのSSL暗号化)による通信自体のデータ保護を、「のぞき見からの」安全と例えるとするなら、AES128/256はデータ自体を暗号化するため、「のぞき見されたとしても」安全と言うことができます。AES256もビットの羅列で復号できることには変わりませんが、2の256乗のパターン数となるため、2020年時点で存在するいかなる攻撃によっても破られない強度と言われています。

リカバリ機能

送り手と受け手間がコネクションレス通信であるUDPをベースとしていながら、SRTプロトコルを用いた伝送において受け手はパケットロスを送り手側に通知する機能を持っています。これにより送り手側は欠落部分を知り、再送を行うことが可能となります。SRTはこのような通信を伴った伝送により、一方的な送信と比較して画音の破綻を低減させることができます。

遅延処理

もともとが遅延の少ないUDPベースの伝送ですが、SRTはパケットロス発生時の再送要求を実施するための時間を確保することが必要です。一般的にはパケットロスが大きければ大きいほど、リカバリに割り当てるために確保すべき時間は長い方がのぞましく、その分がエンコーダ-デコーダ間の遅延量に上乗せされることになります。ネットワークの状況により確保すべき時間が左右されることになりますが、SRTの場合は一般的にエンコーダ→デコーダ→エンコーダと簡単な通信を行って測定するラウンドトリップタイム(RTT)の3~4倍を、リカバリに割り当てる遅延時間(Latency)として確保することが推奨されています。

トラバーサル機能

一般的に企業のネットワークではファイアウォールが設置されており、不正なアクセスが社内ネットワークに侵入しないよう対策が取られています。セキュリティが担保される一方で、他ロケーションと通信する際には社内システム管理者に設定変更を依頼するなど、手間がかかってしまう側面もあります。
SRT ではハンドシェイクの技術が活用されており、ファイアウォールの設定変更や複雑な設定を行うことなく他ロケーションと接続を確立することができます。

相互接続

SRT Alliance はアドバイザリーメンバーであるAvid、Microsoft、Telestreamを筆頭に現在400社以上のメンバーが参加しています。そのメンバーは配信機器メーカだけでなく放送機器メーカ、CDN事業者、プラットフォーマー、クラウドサービス事業者、システムインテグレータなど多岐にわたっており、弊社伊藤忠ケーブルシステムもSRT Allianceに参加しております。 新規での設備投資はもちろんのこと、既存システムとの連携にもSRTを活用することができます。

高品質・低レイテンシ

ネットワークを介して映像を配信・伝送する場合、特に商用サービスとしてそれらを行う際には高品質であり、かつ低レイテンシであることが求められます。一般的には専用回線を引くなどしてそれらの問題を解決しますが、コストや手間が大きく簡単なことではありません。
SRTはリアルタイム性を重視するUDPをベースにしてレイテンシを抑えています。UDPでは弱点としてジッターの影響を受けやすくノイズが発生しやすいことが挙げられますが、SRTでは独自のパケットロス救済措置を含んでおり映像品質も担保することができます。

ネットワーク状況の監視

ここまでSRTのメリットをお伝えしてきましたが、サービスで利用するには「本当にパケロスを救済できているのか」「安定して通信できているのか」は気になるところですし、サービス品質として監視する必要があります。
SRTでは「リコネクション数」「再送パケット数」「ドロップパケット数」「ラウンドトリップタイム」「接続帯域幅」「ACK/NAK数」など日々の運用に役立つ統計情報をリアルタイムに取得しています。

SRTの活用事例

教育現場での活用

大学や予備校などにおいて、授業コンテンツのオンライン配信に対する需要はライブ・オンデマンドに関わらず高まっていますが、多数の学生・受講者に安定して映像配信を行うには高価なケーブルシステムを構築する必要があります。
行使の授業を撮影したソースをSRTエンコーダでIPに変換、クラウド上に構築したSRT Gatewayを介して必要な数だけソースを複製すれば特定多数に授業の様子を配信することができます。一般的な公衆網で構築できますので初期投資を抑えられます。

 

SRTの活用事例 教育現場での活用

 

オフィスでの活用

一般企業においては複数拠点それぞれの社内ネットワークは整備されていても、拠点間のネットワークは専用線ではなく法人向けインターネット回線をご利用されているケースが多いと思います。回線品質に課題を持つ拠点が存在する場合、SRTによる伝送を行うことで、ネットワーク帯域が十分に確保できない拠点においても、品質の改善が期待できます。またファイアウォールと親和性が高いため、情報システム部門様の運用不可軽減にも寄与します。

SRTの接続構成

SRTを用いた伝送環境を構築する際、考慮すべきポイントは大きく3つあります。
これらを決定することにより接続構成が確定します。
ポイント①:エンコーダはライブ配信を行う用途か、伝送用途か。
ポイント②:伝送は送り元1:受け先1か、送り元1:受け先n(複数)か
ポイント③:受け側は出力インターフェースを持つ必要はあるか。それはSDI(またはDVI)かHDMIか

図に表すと、以下のようになります。

 

SRTの接続構成

 

SRTを使用した製品紹介

Haivision MakitoXシリーズ

MakitoXシリーズは超低遅延IP映像伝送用エンコーダ/デコーダのラインナップで、Haivision社を代表するプロダクトです。
ご利用の要件に合わせて4Kモデルまで揃っており、FHD伝送では x1~4チャンネルモデル、形状はアプライアンスタイプ/ラックマウントタイプとバリエーションも豊富です。
すべての製品がSRTに標準で対応しており、業界で最もこの技術のナレッジを持つ経験豊かなサポート体制がSRTプロトコルの最適なご利用をお手伝いします。

 

Haivision MakitoXシリーズ

https://www.itochu-cable.co.jp/products/SRT_Haivision/item_4151

Haivision SRT Gateway

Haivision SRT Gatewayはエンコーダとデコーダのペアで行われる従来のIP伝送をよりフレキシブルな構成にするための中間アプリケーションです。MPEG2TSをSRT化し、またSRTをMPEG2TS化するといった従来の設備のSRT対応が可能になる他、エンコーダから受けた伝送ストリームを複製し、複数の伝送先に配信するレプリケーション機能は1:nの伝送を可能にします。また、エンコーダとデコーダのファイアウォールを介錯することができるため、エンコーダあるいはデコーダを様々な場所に移動させて伝送するケースにおいては、その都度ネットワークセキュリティポリシーを変更する負担が軽減されます。アプリケーションの提供形態はサーバやアプライアンスモデルの他、VMウェア提供で汎用サーバへインストールすることや、パブリッククラウド上に立てたインスタンスで動作させることも可能です。

 

Haivision SRT Gateway.jpg

https://www.itochu-cable.co.jp/products/SRT_Haivision/item_4152


Haivision KBシリーズ

Haivision KBシリーズはライブ配信を行いたいケースに最適なアダプティブビットレート出力対応のライブエンコーダです。ご利用の要件に合わせて1チャンネルモデルから複数チャンネル処理モデルがあり、またエントリーモデルや4Kモデルの可搬型タイプとラックマウントタイプがあります。
すべての製品がSRTに標準で対応しており、業界で最もこの技術のナレッジを持つ経験豊かなサポート体制がSRTプロトコルの最適なご利用をお手伝いします。

 

Haivision_KB.png 
https://www.itochu-cable.co.jp/products/liveencoder/item_2020


Haivision PLAY Set Top Box

Haivision PLAY Set Top BoxはHaivisionがリリースしているSRT動画再生プレイヤー「PLAY」が予めインストールされているセットトップボックスです。HDMIでテレビやモニタにつないでエンコーダから送られてきた映像をライブ表示させることに最適化されていて、デコーダと比較して安価です。
ラインナップはFHDに対応している「PLAY2000」と4Kに対応している「PLAY4000」があり、いずれのモデルもSRTに標準で対応しています。

 

Haivision PLAY Set Top Box
https://www.itochu-cable.co.jp/products/SRT_Haivision/item_4154


MediaKind CE-Mini

MediaKind CE-Miniはライブエンコーダの老舗、旧envivio社の流れをくむMediaKind社が2020年に発売したエントリーモデルの可搬型ライブエンコーダです。パブリッククラウドへライブ映像を打ち上げる用途のライブエンコーダは近年各社から販売されていますが、このCE-Miniは特定のクラウドベンダとの組み合わせに固定化されることなく、事業者様のニーズに合わせた柔軟な用途でライブフィードを出力することが可能です。
オープンソース化されたSRTプロトコルを標準でサポートしており、クラウド上の配信基盤への打ち上げ用ネットワーク回線が不安定なシーンにおいてもライブ配信の品質を安定化させることができます。

 

MediaKind CE-2000 

まとめ

TCPやUDPからの進化

SRTはセキュアかつ信頼性の高い伝送プロトコルを目的として開発されたため、TCPのハンドシェイクのような機能と、UDPの低遅延伝送の「いいとこどり」を実現している意味において画期的な技術です。さらに、プロトコル自体がオープンソース化されているため、世界中の優れた開発者の手によって、SRT自体が今なお進化を遂げている点も注目されるゆえんです。

これからの映像伝送に求められるもの

5Gに代表されるようにあらゆるネットワークの高容量化・高速化が進んでいる昨今ですが、IP映像技術も引けを取らないスピードで進化をしています。マルチアングルライブ、4k/8K/12Kといった高精細映像やVRがより身近なものになるためには、複数信号の同期化、主系・副系のシームレスな切替といった実用的な機能から、映像伝送自体の高品質化、安定化といた継続的な改善まで総合的な向上が求められます。

 

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